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第十一幕 互いの気持ち










翌日。翡翠は自分の頬をパンパンと叩いた。
「・・・よし」


「おはよ♪」
笑顔で登校する翡翠に、皆、笑顔で返す。

靴音が、響く。

自分の席・・・棗の隣りに向かう。こちらに顔も向けず、窓の外を眺める彼。

『―知らねぇよ。お前なんか』

昨日の彼からの答えは期待していた分辛かった。それに、彼の目になにか感じた。

深呼吸。

「―おはよう!棗」
それに彼は答えない。それでも翡翠は続けた。
「ねぇ棗。昨日あたしの事、知らないって言ったよね」
努めて明るく世間話のように言う。ならさ、と。
「ならさ、これから友達になろ!」
自然に、笑みが零れる。

沈黙の果てに。
足早に、彼は出ていった。
「ふぅ・・・」
今朝彼女が立てた今日のノルマ。
『棗と友達になる』
馬鹿みたいに脳天気かもしれないけど、棗と仲良くしたいって思うのは本当だから・・・。


「馬鹿。脳天気。なんでー」雪の溶けかけた森の木。その上で棗は呟いていた。昨日彼が彼女に冷たく当たったのは彼女が自分を嫌い近付かなくする為。多分彼女へ嘘を付き続けるのは無理だし辛いから…なら、ならいっそー
「―嫌われた方が、良かったのに」
棗の予想を裏切って彼女は自分を避けるどころか、前より踏み込んで来ている。
『友達になろ、棗』無邪気に笑う彼女が恨めしい。いっそ嫌われた方がまだ良かった。自分の罪悪感を感じず守ってやれたのに…。

―なつめはゆぅりの、¨ともだち¨だね―


過去と同じ笑顔、同じ言葉、同じ瞳・・・
いっそ全てを教えてやろうか、
彼女の哀しみを痛みを喜びを怒りを慟哭を飢えを苦しみをー悪魔の囁きから顔を背ける。

「だめだっ・・・今度あいつを裏切ったら、ほんとに・・・」

「おはよ―ユゥリ・・・」
ルカが登校したのは、予鈴ギリギリだった。
翡翠を見、固まる彼に彼女は、実に優しく笑う。
「おはよう、ルカ」
「なになに?ルカぴょん翡翠と仲良うなったの?」
「まあ、手が早い♪」
蜜柑と蛍が現れ、彼をからかう。
顔を真っ赤にし、ウサギを抱えて否定する彼を見て、何となく懐かしい気分だった。
翡翠は判っていた。棗は十中八九嘘をついている。だけどもう問詰めない。だって、友達になったから。棗を傷つけたくない。だからー
「棗が話せるまで、待ってるからー」

「ねぇねぇ、翡翠ちゃんはケーキ班と飾り付け班どっちに行く?」休み時間。蜜柑やルカと話していると、野々子&アンナがやって来た。
「…なにそれ?」単刀直入に聞くと、彼女らは生き生きとした顔で語る。
「明後日は学園三大Loveイベントもあるクリスマスパーティが開催されるんだよ!」
「その準備で今日からその準備としてクリスマスケーキを作るケーキ班と」
「館内を飾り付けしたり、ツリーをデコレーションする飾り付け班があるの」
「「私達は勿論、ケーキ班♪」」
ケーキがそんなに嬉しいのか、示し合わせたように二人は言い、キャーッと喜声を上げていた。
「・・・蜜柑達は?」

「ウチは勿論ケーキや♪なぁほた・・・蛍?」
なんか後ろでゴソゴソやってると思えば蛍は大きな袋を取り出した。中にはさらに小分けされた袋が。
「・・・なにそれ」
「『クリスマスケーキ班専用グッズ。これで楽々楽しくケーキ作り♪セット』よ」
中には筋肉増強手袋、フライングスワン(蛍緊急出動要請用)呼び出しホイッスルなど・・・。
「ルカは?」顔を近付け聞く翡翠に真っ赤になりながら、
「・・・飾り付け班。去年そうだったし…」その顔が寂しそうだったので、翡翠はいった。
「去年と違うのやるのもいいじゃん♪あたしなんか、ケーキ作りにも飾り付けにも役立たずなアリスだけどさ」
笑顔で、翡翠は言う。
と、

「っ!」



「―ユゥリ!?」

突然、背中を丸めて口を押さえる。
「翡翠、大丈夫?」
「気分悪いんか?」
蜜柑や蛍も気づいて、慌てた。
「っ・・・」
震える手で、彼女が胸元から取りだしたのは、硝子造りの薬入れ。
ペンダントのそれから丸薬を取り出し、嚥下する。
やがて汗は引き、荒い息で彼女は椅子に背を預けた。
「はぁ・・・ありがとう、もう大丈夫。心配かけてごめんね」
まだ顔は青いが、笑む彼女を見て蜜柑等は安堵する。
「それ、お薬なんか?」
彼女が大事そうに仕舞うそれを見て問う。
「うん。・・・大切な人に、貰ったの」


 

             影で見る男は、歪んだ笑いをする。
  





          「そうだ。それを呑め。そうすれば―――」








不気味に笑い、彼は去った。
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