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第七幕 私にできること




跡無翡翠が、仮りの名である事をB組生徒が知ったのは、騒動から三十分程立った頃だった。


棗は、翡翠が倒れたところに吉か凶か、現われた。
全てを手近な生徒から聞き出し、叫んだ―――否、怒鳴った。

「俺がいつ、それを望んだ!!!!」と。


そして、


「こいつをもう、これ以上傷つけるな!!!!!!」

そう、叫んだ。


騒ぎを聞き付けた岬と鳴海が対処して、病院に運び―今に至るまで、彼は説明した。

出会いの原因。彼女の発見の経緯。その際の、痛々しい格好。彼女のアリス・・・

全て、語った。余す所なく。






翡翠の脳は記憶を取り戻そうとしていた。しかし、何ものかに阻まれていた。







「これから、彼女にどう接するか。それは、自分達で決めなさい」
鳴海に去り際、放たれた言葉。
それに基づき、これからどうするか、皆悩んだ。

彼等は、クラスのボスを救おうとした。
しかし、失策だった。彼女は彼を無視した訳ではなく、記憶が無かったのだ。そして、棗も知っていたのだ。
だから・・・なにも言わなかった。
それを勝手に知って、深く考えず、無駄に策を立て、結果得たのは少女の涙と少年の怒号。そして虚しさだった。

「軽率だったのね。私達」
「跡無さんに、酷い事しちゃった・・・」



蜜柑は悲しかった。

目の前で、友達が冤罪を架けられているのに、なにも出来なかった。
翡翠が傷付けられているのに、なにも出来なかった。悔しかった。
前を走る棗を、追いかける。
「待って!棗!」

手を掴んだ。
「あんた翡翠ちゃんの事、なんか知ってんのやろ?なんで教えてあげへんの!?」



沈黙が途切れた。聞こえたのは、
「お前には、分からない」

棗の拒絶の言葉だった。
凍ってしまった蜜柑をおいて、棗はどこかに行ってしまった。






『お前には、分からない』

貴方はそう言った。

『分からない』


貴方は闇を見て来た人だから、私より色々知っている。

『あなたになにがわかるの』

貴女もそう言ったね。偶然にも、私は同じ事を言われた。



私にはなにが分からない?私にはなにができるだろう・・・。






「蜜柑」
突然、横から顔を出され、硬直する。
「・・・蛍」
「さっきは悪かったわね。跡無翡翠には非がないのは分かってた」
蛍の意外な発言に、蜜柑は驚きを隠せなかった。
「じゃあ、なんで・・・」
「だって、あんまりあの人といられて、あんたが居なくなったら寂しいじゃない」
しれっと吐く蛍にニヤけるのを押さえられず、
「ほ~た~る~♪」

バカンバカンッ

そして、例の如く撃たれる。と、さっきの事を思い出した。
「そやっ。蛍、相談なんやけど・・・」
先程の事を話し、言う。
「確かにウチには二人の間になにがあったかなんてわからへん。だけど、友達の事分からんて不安で・・・」

パッコーン

馬足手袋炸裂!


「馬鹿じゃないの」
頭を涙目で押さえる蜜柑に、蛍の言葉が流れ、聞こえる。
「あんたはあんたで棗君でも跡無さんでもない。だから彼等の感情や出会いなんて分からないし・・・分かる必要ないでしょ?」
一見、他人事だと言ってる様で、違う。
「あんたはあんたのやり方で、翡翠さんの傷を癒してやんなさい」
「・・・っうん♪」

それを、木陰の上から見つめるは、棗。その視線は、その姿は、酷く痛々しい。

「ごめんな―」

その言葉が贈られたのは、蜜柑か、はたまた別の誰かか。

ただ。彼の口から零れる、呟きは


                    ―守るから―


             ―今度こそ―

                                真摯と、深思に満ちていた。
蜜柑が、”私にできること”を考える回です。次回、実行のとき。
そして、B組の人々は、翡翠とどう接するのか?
彼女の記憶を阻むものとは、なんでしょうか?
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