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第三幕 歩み始める少女











翌日。


鳴海が迎えに来た。
彼女は今、看護婦に包帯を解いてもらっている。
今、最後の―――眼のそれをとっていた。
「おはよう。・・・平気?」
挨拶する鳴海に、彼女は―翡翠は、
「そんなの、まだわからない」

シュル、と包帯が解かれる。

「これから、わかる」
一歩踏み出すのだから・・・。

解かれた包帯の下から現れた双眸には、光があった。
運命に挑もうとする、強い意志が。




「翡翠ちゃんはB組だから此所。ちょっと待ってて」彼が担任らしく、慣れた手付きで入っていった。


「皆さんおはよ~♪今日は転入生が来まぁす」
突然のニュースに、皆が例外なく目を輝かせたのは言うまでもないが、その中でも一番嬉しそうだったのは茶髪をツインテールにした少女―――佐倉蜜柑だった。
「転入生!どんな人やろなぁ蛍♪」
「うるさいわね。黙りなさいよバカ」
冷たく答えたのは、黒髪に紫色の目の美少女ー今井蛍。
「楽しみやなぁ、仲良くなれたらええなぁ…て、蛍?」
親友が何かを取り出していた。
それは、カメラ…。
「良い顔なら売れるでしょ」
すでに蛍の目には、¥マークが光っている。
「さよか…」
親友の主戦主義に恐ろしくもあった。
―なんにしろ、どんな人やろ
ワクワクした顔の生徒達に応え、
「気になる?だよね!では!入ってぇ」

ガチャッ。

「「「「っ…」」」」皆、彼女の美しさに凍り付いた。
絹の様なウェーブのかかった黒髪、雪の様に白い肌。

細い体躯は、硝子細工を思わせる。


そして何より万人を引きつけるのは、翡翠色の煌めく瞳。

意志の強さを感じさせる、エメラルドグリーン。
「跡無翡翠ちゃんです!仲良くね☆」
「皆さんよろしくお願いします」
少女は笑顔のお手本のように、完璧に微笑む。

キーンコーンカーンコーン・・・

鳴海が去り、多くの生徒に囲まれる。
「何処から来たの?」
「何歳?」
「アリスは何?」

戸惑う彼女に、一つの明るい声がした。

「みんな落ち着き!翡翠ちゃんが驚いてるやろ?」
人垣から出て来たのは、明るい茶色の髪をおさげにした女の子だった。
「初めまして!ウチ、佐倉蜜柑言うんや。よろしくな!」
ニコリ、と自然に笑っている。それが当たり前の様に。

その様に翡翠は羨望を覚えた。
そして同時に『彼女なら、あたしを光に導いてくれるか』と、希望を感じた。

「・・・よろしく。蜜柑ちゃん」手を握った。

―この時の翡翠の予感は当たることになる―
「こっちがウチの親友で、今井蛍や」
「よろしくね、跡無さん」
素っ気なく言う間に彼女は、写真を蛍衛星で取り巻くっていた…。
「んで―あれ、棗おらへんな」
振り返り、彼女が言う名に翡翠は何かを感じた。
「な・・・つめ?」
「うん。黒髪で赤い目の、まあ悪い奴ではないで!初対面の奴には厳しいけど」
「それはあんただけじゃない?最初にパンツ脱がされるトラウマ抱えてるなんて」
「っな!?蛍、人のトラウマ引きずり出すな!!!」
そうして騒ぐ少女達をよそに、翡翠は。


「・・・っ」

息を、呑む。


彼女の心臓は、意志関係無く、ドクッドクッと波打っていた―――・・・




第三話では、少女の名前(記憶喪失中なので、仮の名な訳ですが)がついに出てきました^^
一応意味があって、

跡無→跡(奇跡、記憶)が無い      翡翠→瞳の色

名付け親は鳴海先生です。第一発見者だしw←


次回は、いよいよあのキャラが登場します!人気投票で主人公の蜜柑を差し置き、毎回一位を獲得している!!!
そして、第二話で翡翠を支えた人物の正体も明らかに・・・!

待て次回!!!>▽<ノシ
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