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PC修理出してました

というわけでどうも、PC復活で執筆再開したのでこちらも。
前記事で紹介させていただいた企画での没作を書いたのでこちらにも。
猫系女子って萌えますよね
 気まぐれ、魔性、高嶺の花。それが春宮唯華に対する周囲の評価だった。鉄面皮を貫き
通しているかと思えば、不意に春の日向のような微笑を見せる。ギャップ、といえばいい
のだろうか。唯華のそれに陥落されるものは多く、『雌猫』などというふざけたあだ名がつ
くほど。もっとも、無意識の行動でなければ『雌彪』になっていたところだけれど。
 くりっと丸い瞳は無表情のため細められ、小さい口と相まって外見も猫のようだった。
けれど、一番猫のようなのは。
 「安藤、そこの返却本、もとに戻しといて」
 僕の思考を断ち切ったのは、今まさに考察していた少女からの短く簡潔な指示。それに
「うぃーす」と、やる気のないけだるげな返答で応える。と、一瞬こちらをちらり、と見
た彼女の目は、非難あるいは侮蔑をはらんでいた。そういう視線も美人は様になって良い。
うん、悪くない。
「・・・・・・」けれど結局彼女は何も言わず、僕に託した仕事とは別の本の山を抱えてその場
を去る。
 僕、安藤亘と彼女、春宮唯華はクラスメイトであり図書委員のペアでもある。それはほ
んの偶然で、うわさに聞く『雌猫』に特段好意や興味があったわけでもない。けれど中々、
この少女を観察しているのは面白かった。
「は、春宮さん!」唐突な呼びかけに僕は現実に戻された。視界を向ければ、自分に背を
向けて本棚に本を戻していた彼女に声をかけた者がいる。上級生らしきその男へ唯華が向
ける視線は、先ほど僕に向けたそれと同じ。あるいは呆れすら含んでいる。確かに、静寂
を尊ぶべき図書室で今のような大声を出すのは、配慮に欠ける行動だろう。それに相手も
気付いたのか、以降の会話はぼそぼそとした声で聞き取れなかった。が、彼女の顰められ
た眉と真一文字に結ばれた唇、なにより少年の震わす肩から、想像はついた。やがて少女
が返した返事は、僕に指示を出した時のように短く、簡潔だった。それを聞いた上級生は
一拍おいて、図書室を去る。入口のすりガラス越しに見た彼の顔は、まさに失恋の体。
 淡々と作業を再開する少女。僕も、何事もなかったかのように足元の脚立を抱えて、林
立する本棚を横目に少女の隣に並んだ。丁度、先ほど玉砕した先輩の立っていた位置だ。
無言で脚立によじ登り、伸び上っておこうとしていた書物を彼女の手から取り上げて、す
るりと収めた。
「にらまれてますよ」明るく告げる。
「今のセンパイ、サッカー部のエースで女子に大人気ですからねー。最近此処によく来る
なあと思ったら、唯華さん目当てだったんですねっ」近くの本棚から、慌てたようなごそ
ごそと動く音。通り過ぎた棚の陰から感じた視線は、女生徒たちのもの。サッカー部のマ
ネージャーもいたことから、エースの恋慕の応援か、見物か。結果の無残さにささめき合
う少女達、こぼれ聞こえた言葉は『雌猫が』という罵倒。しかしそう罵る彼女達こそ、総
毛立てて威嚇する猫の群れに見えた。
「・・・名前で呼ぶなと、言っている」ぼそりとようやく返された言葉に、突っ込むところは
そこですか、と苦笑する。
「で、なんで惚れられたんです?」
「下校途中にグラウンドを通りがかったら、彼が蹴りそこなって転がってきたボールを、
取りに行って渡してあげた」
たったそれだけで、と思うかもしれないが、それで陥落してしまうのが、春宮唯華の『雌
猫』と称される由縁だ。気まぐれな親切心とめったに見せない微笑を美少女に向けられた、
というラッキーの三乗でサッカー部エースの目は曇らされたのだろう。心中お察しモウシ
アゲマス、とつぶやくと心にもない弔辞だな、と嘆息された。
「ま、夜道には気を付けてくださいね。なんならボディガードでもしましょうか?」
「来週は期末試験なわけだが、対策はできてるのか?学年最下位」切り替えされた現実は
僕の弱点を的確についてきて、愛猫と戯れていたら急に頬を引っかかれた心持になる。そ
う笑いながら苦情を言うと、だれが愛猫だ、とねめつけられてしまった。唇をとがらせて
せめてもの抵抗に不満を表しながら、脚立で届く位置の本を片付ける。と、下から彼女の、
でも、というささやきが聞こえた。
「成績不良で補習になって、ここに君が来ないんじゃあ、退屈だから」
だから、帰って勉強してなよ。最後にはそう、鉄面皮で告げられてしまったけれど。わず
かながらに、見えた。くりっと丸い目が細められ、招き猫のようにおだやかな表情で、僕
の不在を望まない、と言ってくれたのを。
 「ほんと、猫みたいですねえ」気まぐれに与えられるぬくもりが愛おしくて、今日も僕
は彼女を見つめている。
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