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第一夜 







佐倉蜜柑が消えたのは、唐突だった。

その日はとても平凡な一日だった気がする。
朝起きたら、雲一つ無い綺麗な大空で。
透き通るような蒼い世界で彼女はいつも通りだった。
生徒の大半が退屈と感じるだろう授業中は熟睡して。
教師に怒られて、帰ってきたら親友に泣きながら抱きついて、それを軽く拒否され。
彼氏はそれを鼻で笑い、もう一人の親友が慌て諫めて。
彼女は怒ったり笑ったりして、それに釣られて周囲の表情も豊かに変化して。











しかし






その夜







彼女は親友達と笑顔で別れたのに。




翌日から、佐倉蜜柑は消えた。

誰も彼女を憶えていなかった。

記憶から消されたのでは無い。

無かった事にされたのでもない。

消されたのなら、穴が残る。
会った場所に空白が出来て。そこに在った筈だから。残滓があるかも知れないから。


消されたのではなく、作り替えられた。
あの初秋の日、学園にやって来たのも、棗や流架と勝負し、無効化のアリスを発揮したのも、
レオに攫われた棗を救ったのも、その組織、Zへ行き蛍の解毒剤と委員長のアリスを取り返しに行ったのも、
花園会事件で棗の妹、葵を救ったのも、文化祭もラストダンスもクリスマスパーティも体育祭も共に過ごしたのも、
暗く淀んだ空気だったB組の雰囲気を変え今に至らせたのも、全て『佐倉蜜柑』の手柄であり、彼女が皆の光であることに変わりはない。
そして今も皆と笑顔で明るく過ごしている。

改竄された。

『佐倉蜜柑』の情報を。

容姿を植え付けた。

別の存在の。

別の少女を、『佐倉蜜柑』と規定したのだ。

彼女を知る者全ての記憶を。

新たに作り直して。



本当の佐倉蜜柑は。






消えてしまった。




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