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第二頁 図書廻廊








天井も床も計れぬ階数と、その”世界”を収めると言う特質を備えた、巨大な城とも倉ともつかぬその建物を、存在を知る者達はこう呼び表す。

曰く、”図書廻廊”。

人間が暮らす国、星、或いは時空別に分類された、まさに”世界の縮図”。
人のみならず、生きとし生ける者が存在するもの、しないもの、この世に一片でも存在するのなら、瞬時に蔵書として保管、或いは記される。
人々が自覚する世界とは、星は愚か違う時空に存在する”世界”も、同様だ。

本―世界は、人間と同じだ。生きている・・・いや、進んでいる。
例えば雨が降る。例えば物が壊れる。或いは作られる。例えば人が生まれ、死ぬ。
例えば、国が滅びる。或いは生まれる。
その詳細は、欠落過不足無く自動的に記録され、抹消されることは無い。
例えば完全犯罪を犯しても、例えば記録から不都合な情報を消しても。
それらの行動を含め、図書廻廊の”蔵書”には、しかと書かれるのだ。
そして、その存在を当然、多くの人間は知らない。知ってはならない。
侵入者の様な例外を除けば、詳細な情報を知る者たちは、三代名家の人間達だけだ。
一国の頭首も、国家機関も、誰も知ることは無い。

否、”人で無い者”でなら、いる。

”図書廻廊の守護獣”、または”兵器”。
図書廻廊の番人兼管理者である少女の姿をしたそれは、当然人間では無い。
何百年何千年、或いは何万とも知れない年月を、”世界”及び”図書廻廊”が生まれた瞬間から、守護し管理してきたといわれる存在。
守護獣といわれるものの、獣というわけでもない。かといって、単なる創造物でも決して無い。
本来の姿すら把握されていない。彼女(と、表すしかないのでそう示す)は自在に姿形を変えられる上にそれを乱用することも、原因の一つと言える。
その謎に包まれた存在は、各地各国各時空の世界に自由自在に行き来できる。つまり、”こちら側”への干渉は簡易ということだ。
しかし、幸か不幸か”こちら側”からは図書廻廊に干渉、侵入は出来ない。少なくとも、三代名家でもそれは出来ない。
そういった意味では、侵入者達がいかにして図書廻廊の情報を得、侵入しているか、それは守護獣にとって調査すべき最重要課題であろうが、一向にその様子は見られない。
無気力なのか、何らかの事情で出来ないのかは不明だが、今のところ惨事には至っていないので、名家の人間も特に口を挟まない。

”侵入者”。彼らの目的とは、蔵される”本”を得、その世界を手中に収めること。
周知の通り、廻廊に蔵された本は全て、ただの本ではない。
世界の始まりから現在までに至る全てを記録した、いわば”世界”そのもの。
本を燃やせば、その世界も燃える。水に漬ければ、洪水が起きる。切り裂いてしまえば、大地が割れる。
”本が傷付き、消える”=”その世界の変動、滅び”を意味するのだ。
そして、全てを記録した本故に、例えば財宝の隠し場所、例えば逃走中の人間の所在、例えば隠蔽した犯罪の詳細・・・。
手に入れた人間はその膨大な情報を、善用しようと悪用しようと勝手となってしまう。
当然、その情報を消すことも出来てしまう。つまり、”本の記録を消す”ことは ”その世界からその記録に関する森羅万象を消す”ということ。
情報然り、物品然り。そして、人間もまた然りだ。
それゆえに、その全容はひた隠しにされ続けている。
惨事に至ってないのは、例え侵入され本を持ち出されても、廻廊から”こちら側”へ戻る前に、守護獣が制圧するからだ。
そういう意味では、彼女は有能といえる。かつて一度たりとも、不祥事を許したことは無いのだから。
―例外があるといえば在るのだが。

その守護獣以外に現在、三代名家以外の”人間と思われる存在”が、図書廻廊に存在している。
名は、リィ。姓は無い。
出生も履歴も(少なくとも”こちら側”には)不明とされる彼女は、ある日突然現われ、当然のごとく守護獣と行動を共にし始めた。
詳細な記録も無く、守護獣からの報告も無いので、突然としか言いようが無い。
三代名家の中でも、”先代”の部位に値する者達にしか知られていないだろう。
彼女が人間なのか、はたまた”守護獣”なのかは不明だが、”こちら側”に影響を及ぼすようなこと―すなわち本の盗難等だが―は今のところせず、敵意も見られないので、処置は特に無い。
それに、どちらかと言えば彼女が居て、便利或いは好都合なのが現状だからだ。
戦闘、守護面では名に恥じず強力な守護獣だが、”事務”の面はからきしだからである。
リィの担当する”事務”とは、蔵書に時折表れる、”虫食い”の修復作業が主だ。
”虫食い”とは、その名の通り、本の一部が食われ、損傷すること。
損傷はすなわち、世界の一部なり多分なりが崩壊していることになる。それを修復し、復元するのが”事務”。
尚、修復の方法、”虫食い”の原因究明はできていない。これもやはり、守護獣たちは調べる気が無いのか諸事情か。
崩壊したままということも無い為、問題は無いといえば無いが。

リィが守護獣に従順なことも、三代名家が干渉しない理由の一つでもある。
そして、守護獣も職務を放棄したことは、過去に一度も無い。


”図書廻廊”、”本”或いは”世界の縮図”、そして”図書廻廊の守護獣”。
その存在の全てが把握され記された記録は、無い。


今もそれらは、何処とも知れぬ空間で、”世界”を収め、守り、直し、在るのだろう。



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