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夏休みの記憶 中編








空が赤く染まる頃。カラスの啼き声をBGMに、子供達は準備を進めている。
「―はぁ・・・めぐみちゃん・・・」
「まぁそう落ち込むなって・・・」
「きっと次があるよ」
ひかるの落ち込み様に前者は苦い笑みを浮かべながら、後者は棒読み口調で慰めた。
「・・・というか、百物語に準備なんてあるんだね!」
兄のあまりな落ち込み様(十原因のあまりな反省の無さ)に耐えられなくなった真白は、健気にもわざとらしい明るい声で、話を変換した。
「まぁ、ね。蝋燭を百本集めるのが決まりだったりするのは良く聞くでしょ?その他にも多少ある訳」
仲裁に疲れ切った顔をしているいーは、簡潔に説明した。
現在、離れのとある部屋。四隅に座布団が敷かれ、彼らが座ることを示す。蝋燭は四本、燭台に立てられ用意されている。
「取り敢えず、それは別の部屋に置こう」
「えーっ。運ぶのめんどくさいし、ここでいーじゃん。それぞれの前に置きゃいいんだろ?」
と、四隅に置こうとすると・・・
「っだめだ!」
素早く止めに入る、いー。
「な…なんだよぉ」
びびる太一に、
「あのな…蝋燭は何で百物語で使うか、知っているか?」
首が左右に振られるのを見た後、取り上げた燭台の束を別室に置き、長い廊下を歩みながらいーは話始めた。
「蝋燭と水の入った平皿。使うものはそれだ。平皿を部屋の中央に置き、蝋燭の灯った燭台と共に、全員四隅に座る。それは何故か?


結界が、張られるんだ」
「ーは?」
唖然とする一同に、ニコリともせずに、いーは説明を続ける。
「家の表札は、一種の結界になってる。だから、不適切な奴は近付かない。それと一緒で、説明通りに準備をすれば、異質なモノはこの部屋に入れない。全ての蝋燭を吹き消すまではね

百物語…不吉、負の感情を抱えた物語を抱えた話は、不可思議なモノ達を呼び出す。引きつける。それらから守る為に、蝋燭や水鏡はある。無意味に存在する訳じゃないんだ」
「「「ほへ~」」」
夕飯の皿を並べる(ちなみにメニューはカレー)ついでとばかりに終幕を迎えた説明。それに、ほこほこと湯気を上げる男二人十オレンジジュースをちびちびと啜る少女が、ふ抜けた返事を放つ。
「じゃあ、あの時蝋燭置いてたら…」
「間違いなく結界は張られ、魑魅魍魎の類が集まっただろーな」
さらりと答え席に着く入亜。青ざめる太一に反して、長い黒髪を真っ赤なリボンで三つ編みにしていた真白が、問う。
「ちみもうりょうって、何?」
「妖怪とか幽霊とか、そういった類の奴等だよ」
「さっすが神社の跡継ぎ孫息子!詳しいなぁ」
朗らかに笑うひかるに、入亜も苦笑いで返す。
「そらどーも。さ、冷めないうちに食おうぜ!」
そして四人は激辛カレーを、賑やかに食べ始める。


四人がそれぞれの座布団に座ったのは、宵の口ー午後十一時。とはいえ、小学生が起きていて良い時間ではない。そういう意味でも、厳しい保護者ー入亜の祖父がいないのは、まさに僥倖と言って良いだろう。
「じゃ、火を灯しな」
電気を消し、四つの小さな火に照らされる四人の表情は、悪戯を成功させた子どもの顔、そのもの。
「何か俄然、わくわくしてきたね」
ニコニコと笑みながら真白は、
「じゃあ、お兄ちゃんから」
「はいよー」
話を振られた兄は、ニヤリと口許を更に歪め、
「これは、ぼくが実際に体験した話なんやけど・・・

前に、ちょうど今くらいの時間で学校の前を通ったんよ。そしたら、急に風が強くなって…あ、その日は春やから、それまで陽気は良かったんやけどな、急に寒気がして。その内木のざわめきにまじって、女の子の助けを呼ぶ声や、悲鳴が聞こえて来たんよ。その上、校舎中の電気が突然、一気に灯ってー」
「『汝のあるべき姿に戻れ!ク○ウ○ード!』という声が聞こえた・・・とか、某少女漫画のアニメ版だと第二話にあたる話を元ネタにしてるなら止めとけ、先は熟知している」
「ちなみに漫画版だと確か第一話だな」
少々マニアックなツッコミが入る。ちなみに上記の作品が分かる人は、作者と存分に語り合いましょう。主題歌をカラオケで熱唱するのもアリです。
「ーな!?違う!大事なのはこの先!つかその元ネタが分かるのは作者と同世代でもそうはいないで!つか後半の地の文、完全に作者の私信やないかぁぁぁ!」
話を戻せば、ひかるが見事なツッコミ返し。ちなみにこの作品が分かる人は作者の所持するドラマCDを貸します。
「だから黙れぇぇぇ!」
「・・・お兄ちゃん、もう馬鹿(作者)は放っておいて、話進めよ」
と手厳しい真白。ちなみに元ネタが分かる人は・・・しつこいですかそうですか。
「・・・せやな。コホン。
一斉に点いた電気は、やがて順繰りに消え、また点き、消え…切れかけた電気のようにチカチカと点滅し続けたんや。校舎や体育館の電気までやで?そんで、ラップ音ってゆーか、ホラー映画の効果音みたいなのが流れて。さすがに怖くなって、逃げようと思ったら…朝日がさんさんと照らす、自分の部屋のベッドでした」

プチッ

「「「っ余計タチ悪いわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」」
「え?ぼく嘘はついてなーっぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
そしてひかるは、原型も分からない程の××にされ目や内臓は×××・・・
「て、俺達を殺人犯にするなー!」
「ぼくもまだ死んどらんわー!!!?」
さいで。
何にしろ、三途の川を渡りかけたひかるがまず、蝋燭を吹き消す。
「・・・じゃ、次は太一で」
自然と視線が収束する中、むしろその緊張感が心地よいとばかりに太一は唇を歪める。
「おっし!任せろ、ひかるとは違って飛び切りハードでヒートでデストロイな話を持って来たんだ!」
「たいちゃん、デストロイはちょっと違う・・・」
「ま、細かいことはさておきだ。
ぼくの話は、ネットで調べたんだけど。とある古い駅の話だよ」


その駅は戦前からあって、つい十年くらい前に廃線になってもう動いてないんだけどね。けど、使われなくなってからも、メンテや修繕は欠かさず行われている。
ま、廃線になった理由によって、未だ壊されないんだけれどね。
駅が作られたのは、戦前って言ったじゃん?当たり前だけど、その頃は今より工場の方法も発達してないし、地盤も悪かったみたいでさ。
人柱、なんて
馬鹿なことしたみたいなんだよね。
選ばれたのが、その近辺にあった村の子。身体が弱くて、どっちにしろ長生き出来ないって言われてたらしいんだ。


人柱のおかげか、駅が倒壊することも無かった。戦中も、問題無く動いていた例外の一駅だったくらいさ。
けれど、戦争が終わって、日本が負けて。大きな改革が時代の流れとして起こった。その中で、その駅も壊されることになったんだ。「人柱などという、古臭く愚かな因習を断ち切る、見せしめ」として。けど―駅は壊されなかった。いや、壊せなかったんだ。まるで、人柱となった少女が憑き、守っているかの様に。
工事関係者を襲う怪奇現象には、必ず¨少女¨が関係していた。祟りだ、と囁かれた。身勝手で人柱にされた上にそれを因習と嘯く、我ら人間への。

「―だからその駅は、今も丁重に祭られ、壊されることもないんだと」
「・・・明日は雨だ」
さらっと断言するいー。
「って、何でいきなり天気予報!?」
ひかるの渾身の突っ込みに、
「だって、太一が真面目な話してら」
「ひでーな・・・いーがさり気なく黒い・・・」
いじけながら、蝋燭を吹き消す太一。
「で、次はいーか」
「よ!待ってました!!」
親友二人の囃にも答えず、彼の話は始まる。
「俺のやつは、太一の話と根底は同じらしい。じいさんから聞いたんだがな・・・」

ある村に住んでいた少女は、身体が弱かった。おまけに、感染する病に掛かってからは、誰とも顔を合わせず、奥座敷で一人孤独に暮らしていた。幼かった彼女は、それでも察していた。自分は長く生きられないことを。
彼女の暮らす村は、貧困だった。大した名産も無い、財力も人手も欠落した、大根の髭根にも似た存在。おまけに安定しない天候。その影響で、農作すら上手くいかないでいた。
少女は思った。比較的自分の家が裕福とはいえ、食いぶちどころか、薬代や医者に金を掛けさせてしまっている。これ以上、治りもしない自分に金を掛けさせたくない。家族がやつれる所なんて、見たくない。
彼女は、村外れの崖から、身を投げた。彼女の家族は、彼女の部屋に書き置かれた遺志に従い、彼女が居なくなった分の財産を、ありがたく村の為に、使った。
それから、その村は繁栄した。財力も安定し、大きなスポンサーめいた者だったこともあり、少女の生家は、特に裕福となった。少女が飛び降りた崖には、札が立っていた。「繁栄の礎」と。
戦後、土地開発で村が更地にされることになった。人々は追い出され、名家はことごとく潰され、吸収された。
しかし、彼女の生家だけは生き残った。吸収合併しようとした家の者達や工事関係者は、ことごとく原因不明の怪奇現象に襲われた。曰く、「着物の少女が現れては、¨赦さない¨と言う」曰く、「部屋の電気が不意に砕け、背後に現われた人影が、子供の手をひねり折った」曰く、「工事の機材が勝手に動き、怪我人が複数出た」。

「¨少女の遺志に沿わなかった祟り¨と結論付けられたそれは、地鎮祭に加え、吸収合併と村の更地計画は中止。その後その村は範囲を広げ、今も平凡な田舎町として残っている。そして、少女の飛び降りた崖の近くに神社を造り、怒りを鎮める様待機してる」

「―・・・少女、すげえな」
太一の呟きにひかるも首肯。
「しかし・・・確かに二人の話は似てるな」
片方が人柱、片方は礎な訳だが。
「っよし」
蝋燭が、吹き消される。
「じゃあ最後は真白ちゃ・・・・・・・・・あれ?」
「あ」
「ふぇ?」
壁に寄り掛かり、いつの間にか夢の中。
「あちゃー・・・小一にはキツかったか」
「どおりで途中から、コメント消えてたのね」
「しかし可愛らしい寝顔…起こすのが忍びないな・・・」
しかし思い出せ。今は百物語最中だ。
「っやべ!真白ちゃんにもやって貰わないと、俺ら部屋から出られない・・・」
「え!?」
マジ?と当惑するひかる。思わず襖を開けようと試みるが、当然開けることは叶わない。
「う゛~!!こっちも開かないよ!?」
同じく太一。
「ったり前だろ!?おーい真白ちゃん、早く起きてくれ・・・」
たしたしと頬を叩き肩を揺するが、少女熟睡。
「・・・真白、寝起きはいいんやけど、一回寝ると朝まで絶対起きへんからなぁ・・・・・・」
兄に告げられる最後通告(?)。
「「っ起きてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?」」
太一と入亜、心からの叫び。

―と、奇跡が起きた。

「・・・ん」
目を擦りながら、真白が身体を起こした。
「・・・・・・うるさいなぁ」
欠伸混じりながらも、真白覚醒。
「よっしゃあああああ!!」
「助かったぁぁぁぁぁ!」
「珍しい・・・」
三者三様の反応ながらも、快哉が上がる。その中で原因(元凶)の少女は・・・
「・・・はれ?ちーちゃんは?」
首を可愛らしく傾げる真白。その発言にか、釣られて三人も傾ける。
「・・・¨ちーちゃん¨って、誰や?」
兄の突っ込みに、無邪気に答えた。
「ちーちゃんは、ずっと昔に死んじゃった子だよ」
青ざめる三人。
「んとね、ぼんやり聞こえてたんだけど、たいちゃんやいっくんの話に出た女の子のことっぽい」
青ざめ度数はMAX!
「・・・・・・・・・真白、それは百物語の怖い話だよな?」
「ん~・・・昨日の夜にね、夢の中かな、水の中みたいなところで、ちーちゃんに会ったの。ちーちゃんは、ずっと前に死んじゃって、その前も病気だったし、ろくに遊んだこともなかったんだって。それが¨思い残した事¨になって、じょーぶつ出来ないんだって。ちーちゃんがいるところは、水の中で、蓮の花が綺麗なの!でもね、…寂しいの」ちーちゃんの¨悲しい¨が、いっぱいだから。
髪をしどけなく垂らし、足を崩して語る少女。その様は、いつも見慣れた姿。五歳らしい、幼げで適度に可愛い幼馴染み。ごく普通の女の子。








―昼間、町中で出会った時の妖艶さとは、程遠い。
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