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ひらり、散る





ひらり

花が、散った




「蜜柑」
ふいに、背後から呼びかけられる。
とはいえ、耳慣れた親友の声だ、特段驚いた顔もしない。
「蛍、ようここが分かったな」
振り向きざまに送った言葉に、蛍は一筋ため息を吐く。
「あんたが考えることくらい、分かっているつもりよ。それに・・・

今日は、棗君が帰ってくる日でしょ」

「―うん」
幸せそうに、少女は微笑んだ。


長期任務で半年ほど、棗は学園を留守にしていた。
今回は厄介かつ危険なもので、連絡も途絶えていた。

旅立つ前日、蜜柑は彼と約束をした。
「また、この桜の下で、絶対に会おう」
今日がその日。
待ち合わせ場所で、少女は恋人を待つ。


正門の戸が開き、入ってくる車から次々、危力系の生徒達が降りてくる。
見慣れた顔、知らない顔。中には、負傷した者もいた。
けれど、少女の目はそれらを素通りする。
想い人だけを待つ。探す。

しかし。

彼は、現れなかった。


「棗」

振り返る。耳慣れない声は、不気味に響く。
「んだよ」
気だるげに振り返ると、相手は微かに笑った。
「いいのか?恋人が、待っているんだろう」
「―どう言えってんだよ」
吐き捨てるような、諦め切ったような、言葉。
「確かに、私がとやかく言うつもりは無い。が・・・

お前がもう帰らないと、その一言だけでも、告げなくていいのか?」

「―構わない」
短い、肯定。
「俺が死んだなんて、あいつを泣かせたくなんて、ない」
もしかしたら、こいつが死神ってやつなのかな、などと。
今更だが、思った。


桜の木の下で。

少女は待ち続けた。

二度と帰らない恋人を。



空の上から、彼は想う。

恋人の少女のことを。

これでよかったのだと、言い聞かせながら。



幾年か過ぎ、また



ひらり

花びらが、散った。
以前掲示板で書いた短編。
結構気に入ってたりする。後日談と別視点があるので、それも近いうちに上げようかと画策中←
それがないとこの話、意味分からんだろうし←
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